現代知識人に欠けたもの。本当の批判をしてもらいたい。

属国民主主義論、内田樹、白井聡、東洋経済新報社、1600、2016年7月発行

1、どんな内容か
この本は安倍政権の政治的行動や日本人の生活の変化などを通じて、やや政治的左派(知識人、大学の先生、有名な批評家)的な二人が日本が独立と主権を拒否してアメリカへの属国であることをるる述べ合った本である。

二人は著書も多い。大体第一章の対談の内容が基本である。第一章を読めば全体の議論はかなり見当がついてくる。

第一章
加速する属国化
主権回復と否認の病
天皇の上位にあるアメリカ
安倍政権の改憲志向とアメリカの反応
属国なんだから仕方ない
なぜ反安倍勢力は結集できないか

2、なぜこの本を取り上げるのか
私自身はここで語られていることはいちいち納得できる話である、と思っている。
しかし、こういう内容で政権批判的なことを言えばだれもついてこないのではないかと思う。そういう意味で単なる批判ではなくこういうことで満足している自分も含めての危惧としてこの本を取り上げた。

3、批判の不徹底と通用しない反論、必要なのは内在的批判
これを読むとある意味わかりきったことではあるが、アメリカの言いなりになることを自ら選んでいる自民党という姿が浮かび上がってくる。傀儡政権というような言い方もしているが、何となく二人が批判しているその批判の甘さというのが感じられてそんな次元のことを言って何も新鮮味がないよ、と言われそうな内容である。そしてそんなことを言っても世界が変わるわけでもないでしょ、愚痴でしかない、と言いたくなる内容である。日本の政治的左派の人は人がいいし、素直であるし、育ちもよく、頭もいい人が多いのであるが、何か迫力が全く感じられない。それはたぶん時代がそんなに切迫もしていないからではないか。言っても言わなくてもいいことを分析して一般の人々の前に開陳する。少し面白がって聞いてくれればいいやという気持ちなのか。逆にいえばネトウヨのような迫力がない。
そういう意味では政権を取っている自民党はいろいろな批判をされながらも居直っているようにしか見えない。なぜこんなことが通用するのだという憤慨を持つ人も多い。多分、右からも左からもそうみられているのではないか。

4、この本を読んだ感想
この本を読んで感じることは日本をよくしたいと思う人はやはり時間をかけて、専門の教育をさせて育てなければならないのではないか、そう簡単に今の政治が変わっていくようなことはないと思えば長期的な視点が必要だ。学問にしろ、そういう批判的なまともな政治的人間を育てることしかないのではないか。かつ内在的批判というものが必要だ。自民党にもしっかりした人は沢山いたのだからそういう火が消えることはないはずだ。そういう自民党内部でのしっかりした議論できる人材を育てる必要がある。そうでなければ、この政権もある程度続くとはいえ期待できるものとならない。また我々の批判というものは自らが自民党員であったならばどういうことがいえるのか、という立場での批判というものがないと本当の批判にならない。

5、日本の現状
 日本という商品は誰がやっても大体うまく売れる良い商品のようなものだ。リーマンショックもうまく乗り越えて、ダメな政策や経済といってもみんな飢えるわけでもなく超インフレが起こるわけでもなく、憲法違反といいながら海外への平和維持派遣軍のようなこともするがそれによって事件が起こったわけでもなく日常はきわめて安定しているように見える。そして戦後は戦争しなかった。平和が維持された。世界では戦争だらけであるというのに。沖縄と東北の問題、自然災害の多さを別のものと見ると都会はいたって安定的である。香港のように大きなデモや暴動が起きる要素がほとんどないのである。暴動といえば日本に働きに来た外国人のほうがそういう気分になるのではないか。
 また政治的先手が必要だ。政策の先手がないので批判だけに終始する。これは一番弱い。問題が起こるときには今までテーマに上がっていなかったようなことが大きな問題となって出てくるのではないかと危惧している。右も左も今まで議論もしていないことで大きな問題が出てくることを恐れる。だから本当に批判し、是正して行かなければならないのはもっと本質的な処にあるのかもしれない。

皆様のご意見伺いたく。(この程度にの認識かと怒られそうだが)

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