ドレフュス事件を知ってるだろうか?

「ドレフュス事件、真実と伝説」アラン・パジェス著、吉田典子/高橋愛訳、法政大学出版局2021年6月発行

どんな本であるか

この本はドレフュス事件に関しての全体的な説明というよりも、ドレフュス事件をよく知っている人たち、専門家などに対して、事件での様々な状況や疑問点に関して、現在から振り返って見るとあれはどうだったのかというような、問題別検討というような体裁をとっている。ということから事件の全貌を知らない人には多少困惑させられるところがある。そうはいっても大体概要はつかめる。

なぜ私はこの本を読むのか

ガザの停戦に関して現在(25年3月6日時点)で、イスラエルとハマスの間での停戦交渉第二段階めに入ろうとしているところでもめている。このイスラエルの問題を考える中で、この有名な事件について名前だけは知っていた。しかしそれが何だったか知らなかった。これも何かのヒントになるのかと思って読み始めた。

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イスラエルは誰がどんな思想で作ったのか

「古くて新しい国」(ユダヤ人国家の物語)ヘルツル、村山雅人訳、法政大学出版局、2024年9月発行(原書は1902年ドイツで発行)

1,この本をなぜ読むのか

「反西洋思想」イアン・ブルマ、A・マルガリート共著、新潮社新書

にシオニストのおとぎ話p214から221までに結構詳細にこの小説の内容がまとめられている。その中で20世紀最大の重要本ではないかと書かれている。ヘルツルは才能豊かな作家ではなかったが、20世紀最大に重要な本であるとの表現があるので、すぐに図書館に行きこの本を借りることにした。さらに分かったことはヘルツルという方はイスラエル建国の祖、とも言われている。(墓がウイーンからイスラエル建国後に移転されている。)「反西洋思想」という本はオクシデンタリストいう概念、東洋というか東方の思想で過激な暴力によって西洋思想と対抗しようという考え方について書かれた本である。ニューヨークの世界貿易センタービル崩落の9・11以後にこの惨状を目にして書かれている。但しその後このオクシデンタリストという概念が色々使われてきたかは私の目にする限りなかったのではないか。またこの著者のイアン・ブルマは学者ではないのでその後その概念を発展させる著書がなかったこともその理由かもしれない。別途この本についても紹介することになるが、そういうわけでこのヘルツルの本に出合った。しかもこの法政大学出版局の本はつい最近出版されたばかりだ。読むしかないと思った。

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うつろいやすい「世論」の実像

「世論」W.リップマン、掛川トミ子訳、岩波文庫 1987年初版(原著は1922年発行)

この本をなぜ読むか

米国大統領選、ブラジル選挙、インドの選挙、ジョージア選挙などの選挙、イスラエルニュース、ウクライナ報道、ロシアの動向、フェイクニュース、自民党の総裁選、日本の衆議院選挙、ガザ報道、こういうテレビニュースや新聞報道はどの程度世論に影響を与えるものなのか。あるいはこの報道の裏には何があるのか。世論を構成する大衆・公衆はどんな力があるのかないのか、そのことが霧に包まれるごとく曖昧模糊として、分からない。特に選挙行動にどのような影響を与えているのだろう。というわけでこの本にはその種の事に関する示唆があるのではないかと思い手にした。「世論」とは何か。「世論」というキーワードはどれ程重要なのか。リップマンの本ともう一つ「マッカーシズム」(R.Hローピア著)はアメリカの政治の一端を垣間見させてくれるものだ。理解しやすいことを期待して読んだのであるが、なかなか難しい本である。また、なかなかとらえどころのない本である。本当によくわかったかと言われれば分かりにくいとしか言えないが、中間的なまとめとして報告していきたい。またさらにこの本だけでは理解できないのでリップマンのすぐこの著の後に書いた「幻の公衆」(川崎義紀訳、柏書房2007年、原著1925年)も読む。

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ソクラテスの対話、現代に一番必要なもの

ソクラテスの「弁明」「クリトン」「パイドン」

戦争とその解説者たち

我々の時代には戦争などありえないと思っていた。ベトナム戦争で戦争は終わったはずだった。しかし世界は戦争をし続けていた。それは局地戦的なものでしかない。いわゆる紛争と言われるものだった。しかし今や本格的な国と国との戦争が起こった。戦争は端的に殺し合いとなっている。ウクライナ、ロシア双方で10万人以上の死者を出している。またパレスチナの人々は3万9千人すでに死んでいる。(24,07,23現在のニュースで)

まさに殺し合いだ。我々はそれを新聞やテレビやユーチューブで見たり聞いたりしている。取材をしている人たちも大変だ。また識者がいろいろ出て来る。これだけ戦争に詳しい人が日本にもたくさんいるんだということ、さらに言えば東大にもその種の専門家がいる。自衛隊にも当然ながら情勢分析ためにいる。また笹川平和財団なるものもこのウクライナ、ロシア、中国についても詳しい。この現実の状況を解説できるだけの研究をしている人たちがたくさんいる。どういう人がこの人たちを養っているのか。どういう目的でそういう研究組織があるのか。そういうところに何となく疑問もわく。軍備についても非常に詳しく知っておられる方も多い。

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ヨセフスの自伝から見る現代のイスラエル

フィラウィス・ヨセフス「自伝」秦剛平訳、山本書店、1978年

(前書き山本書店主、解説、あとがき秦剛平)

なぜこの本を今読むのか

イスラエル問題の現在、いつ終わるとも知れないガザの苦難、ハマスも悪い、イスラエルはもっと悪い、特にネタニヤフ政権はもっとひどい。(オランダハーグの国際司法裁判所はプーチンとネタニヤフに犯罪者として裁定を下した)ことに、今年のアメリカの大統領選挙、インド、ロシア、6/3にはメキシコ女性大統領が誕生するというニュースがあった。そういう世界で選挙の年と言われており、その選挙結果によりウクライナやイスラエル。ガザ問題の世界での扱いが大きく変わる可能性がある。私は、戦争というものの悲惨さ、過酷さ、フェイクな情報戦、、協力する陣営の対立、弾薬工場の増産活動(背後にある産業間の戦争でもある)戦時体制、制裁回避、国内政治の動向による政治家や政策の不安定さ、i1枚岩ではないヨーロッパ、NATOの動向などTVニュースや新聞で毎日読んでいる。やはり強いやつが強いだけだ、との感は否めず。国連決議も弱く実際の行動までにはいかない。グテーレス議長が何を言っても事態は変わらない。

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反戦歌のない時代

鶴見良行著作集2,べ平連、みすず書房、2002年6月(著作集は全12巻、大体一冊、500ページ、7000円程度)

「志の女」ジョーン・バエズ

この著作集の中のこの巻は大体べ平連で活躍していたころの著作、というか収録されている単行本はなく、雑誌に書き散らしたものを集めたものだ。解題によれば、ジョーン、バエズの記事は1967年朝日ジャーナル2月19日号で発表とある。朝日ジャーナルのあった時代のことである。

ところでこのジョーン・バエズのことであるが、私が現役のころ10歳下の部下たちと話していた時のことを思い出した。現在60から65才くらいの人たちに話を聞くと、ボブ・デュランは知っているがジョーン・バエズは知らないというのでびっくりしたことがあった。この鶴見良行の本を開いて、突然目に入ってきたジョン・バエズについてなつかしさのあまり書くことにした。

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戦争の現実と真実

岩波現代文庫、スヴェトラーナ、アレクシェ-ヴィッチ、翻訳三浦みどり、解説澤地久枝、初版2008年群像社から発行、岩波現代文庫2016年発行

岩波の現代新書の中の一つ、ロシア、ウクライナ戦争が始まった頃この本を見つけた。しかし何となく読めなかった。今の戦争とは違うんだろう?とか思って。

しかしたくさんのロシア女性が従軍した。(あとがきによると100万人、15歳から30歳)また500人以上からインタビューである。

題名の意味

しかしこの題名と中身はどう関係するかがよくわからない。女の顔をしていないのはその通りだと思って読む。女性従軍者のインタビューである。しかしそれも若くてほとんどが志願兵である。写真があるが若くて元気ではつらつとしている。こんなにかわいい子がなぜ志願するのかと思うほどである。それは祖国防衛のためで彼らの証言を聞くと、いても立っても居られない状況だったようだ。意識がそこへ行き何かしなければならないという切羽詰まった気持ちが先だって行動し志願したのである。自分の年齢を偽ってでも戦争に駆け付ける若い女性たち。そういう若い女性が沢山いた。そしてライフルを持って敵陣へ突撃したいと。しかし戦争の現実は彼らが思っていたのとは全く違っていた。

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日本経済の底力を知らされる。

「再興 THE KAISHA 日本のビジネス・リイベンション」ウリケ・シェーデ著、渡部典子訳、日本経済新聞社 2500円、2022年8月初版、23年4月第2刷

この本は、私はあるユーチューブを見て初めて知った。ウリケ・シェーデ教授が対談で語っていた内容が非常に興味を持てた。いつか読みたいと思った。しかし、本屋に行くと大抵は置いてないか売り切れ状態である。つい最近日本橋丸善に行ったときに図書検索でやっと探して見つけた。経営の棚にあり経済の棚ではなかった。なぜという疑問はあったが、私も悲しいかな少しでも安く買いたいと思ってその本を目の前にしてメルカリやアマゾンの最安値はどの程度かなどと調べる。するとほとんどそう安くない。そこでただちに購入したという次第である。そんなわけで入手できたのが遅かった。

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株主総会の季節に知っておくべき事。

渡辺泉著、会計学の誕生ー複式簿記が変えた世界、岩波新書2017年11月発行

この本をなぜ読むことになったか。

1、複式簿記は,M.ウェーバー、マルクスなどが近代資本主義の重要な発明でかつ資本主義に固有であると言っていた。

2,仕事をしていた時には経理の仕事は私には全く関係ないと思っていた。会計はわからないことが多かった。特にここで表題に出ている複式簿記の本来的な意義というものがよくわからなかった。

3、その後決算とか、経常利益とかそういうものに関係して自分で発表しなければならないことも出てきたが、それでも充分分かっていない面もあり気持ち悪かった。

そんなことから今しかこういうことをしっかり勉強できることもないだろうと思い、それも歴史から振り返れば少しはわかってくるだろうと、考えた。かつ岩波新書でそう厚くもないし読みやすそうだ。

そうはいってもなかなか複式簿記の重要なところが見えてこないので、簿記3級入門という本も脇に置きながら読んでみた。

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プロセス主義の重要性

「ゴルフ『ビジョン54』の哲学ー楽しみながら上達する22章」ピア・ニールソン、リン・マリオット、ロン・シラク、村山美雪訳、ランダムハウス講談社、200611月発行

LIVゴルフとPGAの和解の日に

私はゴルフをするが、ゴルフをしない人、ほかのスポーツをする人、あるいはビジネスで困難な状況にいて何とかしたいと思っている人には少し役立つ本ではないか、と思った。また私の趣味で、革の手帳を作ってメルカリやほかの所で売っているが、自分は革細工のプロではないのである人のアドバイスもありメモ帳の使い方を解説して買う人へのサポートにならないかと考え、冊子をつけて販売している。手帳術のような物ではあるが、過去50年前くらいからの知的生産技術に関する本(梅棹忠夫以来、岩波新書)についてはハウツー本まで含めて結構読んできたのでそれを並べてふりかえるのもいいかなと思って書いてある。一か月に一回くらいは改訂版を出さざるを得ないほどではあるが、ビジネスマンとしてあるいは知的生産を目指す多くの人に役に立つ考え方と思っている。

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